カウンセリングオフィス開業5周年にあたって

南町田カウンセリングオフィスは2021年1月に開業して、ちょうど5年が経ちました。

最初は月曜日と土曜日のみの開室から始まり、順調に新規お申し込みをいただくようになったため、やがて火曜日と水曜日も開室するようになりました。今では月・火・水・土と、週に4日間開室しております。

 

利用される方の人数も増え、私ひとりが対応できる枠はほとんど埋まってしまいました。(多少の余裕はあるので新規受付は開けております。

 

来談される方々と関係者の方々のおかげで、ひとまず軌道にのることができて安心しております。そこで今回は、5年の月日を経て今思うことを書いてみようと思います。

 

やっぱりひとりは寂しい

一周年のブログで「意外と平気」と書いていた孤独な生活ですが、5年続けると「やっぱりひとりは寂しい」に変わってきました。

他所に勤めていた時には気がつきませんでしたが、出勤する時に「おはよう」、退勤する時に「お先に失礼」、ちょっとしたときに「お疲れさま」と声を掛け合う相手がいることは孤独感を和らげます。

かといって今のところ個人開業をやめるつもりはありません。当オフィスに来てくださる方の中には「集団守秘義務」を恐れて個人開業を選択される方もいらっしゃいます。複数人で運営しているオフィスでも、当然、クライエントの情報は大切に扱われますが、事務的な作業や組織内の会議などで、クライエントの氏名や属性が共有されることがあります。個人開業であれば、この点は心配いらないのです。

また、複数人のカウンセリングオフィスにいた頃より、人間味を感じると言われることも多いです。組織の中で働いていると「私」である前に「○〇カウンセリングオフィスのカウンセラー」として振舞わなくてはいけません。そういう意味では個人開業になり、のびのびと自分らしく仕事をしています。

誰とも共有していない自分ひとりのこの部屋は、いわゆる「カウンセリングルーム」のイメージのような明るくシンプルな内装とは異なります。暗めの間接照明、ちょっと変わった観葉植物たち、おなじみのフロイト人形そういったものの中で仕事をさせていただけていることを幸福に感じています。

結局、「寂しいなあ」という感情を味わいながらも、今ある人とのつながりを大切にしていくことになりそうです。

環境に抱えられて

そんな私も完全に孤独というわけではありません。

一度いらっしゃった方なら分かると思うのですが、当オフィスが入っているマンションとその周辺は、異国情緒漂うちょっと変わった空間です。マンションの壁に絡みつく蔦。大量のカエルの置物。口の中が賽銭入れになっている謎のワニのベンチ。

四季折々の草花も豊富です。もうすぐしたら路地の入口にハクモクレンが咲き誇ることでしょう。

「今日もひとりで仕事だなあ・・・」と思いながら路地に入ると、草花と置物の動物たちが出迎えてくれます。

マンションには他にも事務所として利用されている部屋があり、保育園、動物病院、カフェ、和食屋、難民支援などの事業が行われています。

出勤すると、保育園の子どもたちがカートに入って散歩している場面に出くわすこともあります。動物病院の先生と軽くおしゃべりすることもあります。大家さんはいつも路地のどこかにいて、壊れたところを直したり、植物に水をあげたりしています。「やあ、先生、調子はどうだい」と声をかけてくださり、「ぼちぼちですね」と返事をするのがお決まりです。

出勤時、退勤時にそういった道を通ると、どこかホッとします。クライエントの話を聴き続ける仕事を5年間続けることができたのは、自然豊かでゆったりとした時間の流れる環境に抱えられていたからかもしれません。

医療機関では出会わない人々

当オフィスには、明確な精神症状はないけれど苦しんでいる方、公的な支援では行き届かない問題を抱えている方、生き方の問題を抱えている方、問題は解決したけれどより良い生き方を目指している方などもいらっしゃいます。

私には医療機関で心理士として勤務してきた経験がありますが、そこではあまり出会わなかった人々です。

折しも公認心理師による認知行動療法が保険適応になりました。これからは明確な症状のある方は医療機関で認知行動療法を受けるようになっていくのかもしれません。

それでも当オフィスのような相談室へいらっしゃる方はいなくならないと、私は考えています。なぜなら当オフィスへいらっしゃる方は上記のように多様であり、保険診療の枠組みの中では収まりきらないと思うからです。

それは実存的な悩みと言ってもいいかもしれません。誰にでも話せる話ではない、大切なご相談をお聴きできるのは私にとっても幸せなことです。

座ってばかりいてはよくない

カウンセラーの仕事は座ってばかりです。ひとたび面接が始まると50分間は立ち上がることもなければ、首や肩を回すこともありません。悩み事を相談しているのに、カウンセラーがそんなことを始めたらクライエントはびっくりしますよね。

腰痛、肩こりはカウンセラーの職業病です。フルタイムのカウンセラーをするようになり、そのことを痛感しました。

ニナ・コルタートは『精神療法家として生き残ること』という書籍の中で、庭を持ち、庭仕事をすることが、精神療法家が生き残ることを助けると書いています。つまり座りっぱなしの仕事を続けていくには、身体を動かすことや自然に触れることが大切ということなのでしょう。

庭は持てなくても、ウォ―キングやストレッチ、筋トレをすることはできますし、季節の草花を愛でることもできます。

カウンセリングは精神を使う仕事ですが、だからといって身体がおざなりになっていると精神も壊れてしまいます。心身ともに元気で仕事を続けていくためには、軽い運動と自然に触れる機会を持つことが必要だと実感しています。

まとめ

こうして振り返ってみると、孤独感、それゆえの感謝、開業だからこその出会い、フルタイムのカウンセラーならではの苦労など、開業する前にはしたことのない体験をさせていただいています。

きっと10周年の時にはまた違った体験をしていることでしょう。

南町田カウンセリングオフィスは、これからもこの地で、こころの問題に取り組む方々をひっそりとお待ちしています。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

2026年01月31日