カウンセリングオフィス開業にあたって(前編:説明責任・アカウンタビリティーについて)

最初のブログはどのようなテーマがいいのかな、としばらく悩みましたが、やはり開業して社会に対して何をしたいのか、なぜ共同経営ではなく個人開業がいいと思ったのかなど、開業に対する想いを書くべきだろう思いました。

 

書きはじめたら長くなってしまったので、今回は開業という形で何をしたいのかということに焦点を当てて記述したいと思います。

 

カウンセリングや心理療法はあまり身近ではありません。下記の表とグラフをご覧ください。カウンセリングを一度も利用したことがない人は全体の94%にものぼります。どうしてこんなにもカウンセリングは身近ではないのでしょうか。

 

表1.カウンセリング利用状況

 

図1.カウンセリングの利用状況


昔に比べてカウンセリングを受けられる場は増えてきました。高校までの学校にはスクールカウンセラーが配置され、学生相談室が充実していることを売りにする大学もあります。福利厚生の整った企業では提携のカウンセリングルームで安価に相談できる場合もありますし、オンラインカウンセリングも台頭してきています。

 

にもかかわらず一般の方々がカウンセリングや心理療法を敬遠するのはなぜなのでしょう。もう一つ、データを見てみましょう。

 

表2.今後の利用意向


図2.今後の利用意向


ここで取りあげたいのは、今後カウンセリングや心理療法をを利用する可能性についての回答に「どちらともいえない・わからない」が27%もあることです。他のサービス業ではありえないことです。カウンセリングが身近でないことの大きな理由がここにあるのではないでしょうか。

 

ところで私は世界中のすべての人々にカウンセリングや心理療法が行き渡ればいいと思っているわけではありません。カウンセリングや心理療法が必要な人と、そうでない人がいると思うのです。この違いは決して、病気/健康の違いでも、異常/正常の違いでもありません。このあたりは大事な話ですが、脱線してしまうので別の機会に書くことにしましょう(「カウンセリングが必要な人とは?」)。

 

とにかく「どちらともいえない・わからない」と答える27%の中に、カウンセリングや心理療法が必要な人が少なからずいるのではないかと思われるのです。これは心理業界が社会に対して説明責任・アカウンタビリティーを果たしてこなかったことの帰結だと言えるでしょう。

 

カウンセリングや心理療法が必要な人に届くためには、それがどのようなサービスなのか、どのような人が提供しているのか、サービスを受けるとどのような良いことがありそうなのかということについて、説明をする必要があります。このうち、「どのような人が提供しているのかわからない」という問題は、なかなか根深いと思います。場所によっては来談して初めて担当者がどんな人なのか分かることもあります。担当者氏名が分かったとしても、その人が何を専門に研究してきたのか、どのような分野の臨床経験を持っているのか、どのような業績があるのかなど、まったく分からないということも少なくないでしょう。提供するサービスに自らの獲得した知識技術が重要であると知っているから、心理業界ではあれほど研修にいそしむことを良しとしているにも関わらず、ユーザーがそれを知る権利についてはまったく考えもしないようです。これでは「カウンセラーガチャ」と揶揄されても仕方ないでしょう。

 

ただ、中身が見えないからこそ手に取ったときに価値が生まれるという反論にも一理あります。また、カウンセラー・セラピストの自己開示について否定的な意見があることも承知していますし、開示すべきでない内容もあると考えています。これらについても別の機会に書けるといいなと思っています(カウンセラーの自己開示について①―信頼を高める方法として―)

 

南町田カウンセリングオフィスではこういったことについて可能な限り説明していきたい、そして必要な人にカウンセリングや心理療法を届けたいと思っています。これは当オフィスの特徴の一つである、インフォームドコンセントを大切にするということにもつながります。

 

このようなことについて、組織に属して一カウンセラー・セラピストとして取り組んでいくこともできなくはないでしょう。しかし限りがありますし、これはあくまでも私の考えにすぎません。この他にもカウンセリングや心理療法の設定について自分なりの考えがあり、それを実現するには自分で立ち上げるのが一番だという考えに至りました。

 

しかしこのような理想を実現するにあたって、むしろ賛同してくれる仲間と共に経営するほうが良いのではないかという声もあるかもしれません。あまり女性だからとは言いたくありませんが、女性一人での開業にリスクがあることは確かでしょう。なぜ個人開業をしようと思ったのかについては、後編でご説明したいと思います。

 

【引用】
J-Net21 市場調査データ 心理カウンセリング

 

 


2020年12月31日