精神分析におけるセックスとジェンダーを学ぶ会2022年第1回

2022年4月16日、「精神分析におけるセックスとジェンダーを学ぶ会2022」第1回を行いました。今回はフロイトの「男性における対象選択の特殊な類型について」と「性愛生活が多くの人によって貶められることについて」。

人妻や恋人のいる女性、不貞な女性を好きになってしまう男性がいます。彼らはなぜそんな女性に心惹かれるのでしょうか。この問いをエディプス・コンプレックスから説明した論文です。

端的に言えば、第一次対象選択の愛情の対象である母親が、人妻(父親の妻)であり、不貞な(自分以外の男と性交渉した)人であったことが無意識に影響しているという理屈です。

また、思春期以降、「愛情的な流れ」と「官能的な流れ」がうまく合流できないと、心的インポテンツの状態になります。これを避けるために、心の中で女性を貶めることがあります。その結果、「娼婦(世の中から貶められている女性)」のような人を好きになるようになる、とフロイトは論じています。

新メンバーを加えて初めての回でしたが、たくさんの意見が出ました。まず、「愛情的な流れ」と「官能的な流れ」がうまく合流するための必須条件は、やはり心理的な去勢を経験することだろうということ。そのためには去勢される前にポジティブな父親に同一化できていることが前提として必要です。

その経験がない男性は男性としての自分に自信が持てず、女性を貶めることでしか性欲を満たすことができません。近年、よく指摘される女性差別の根本には、父性の不在と心理的去勢の経験の乏しさが関係しているのでしょう。

中には近親姦の禁止が分からない人もいます。生物学的にも道徳的にも、普通は近親姦に感覚的な拒絶感を抱くものです。にもかかわらず、実際に禁止を侵してしまう人は「リビドーの愛情的な流れ」が阻害されている、例えばネグレクトのような被虐待経験をした人なのかもしれません。

その他に、様々な性や恋愛のスタイルが子どもに与える影響についても話し合われました。

今回の論文は文庫で翻訳が出ているので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください(『フロイト、性と愛について語る』中山元訳、光文社古典新訳文庫)。